はじめに
私は普段、コーヒー派でした。朝の始まりはドリップコーヒー、作業の合間にはカフェラテやエスプレッソ。紅茶に対してはどこか「おしゃれだけど少し遠い存在」のような感覚がありました。
でもある日、ふと「高梁紅茶」を飲んでみようと思ったのです。きっかけは、地元で出会った紅茶の生産者の方との会話でした。それまでは友人や訪問客へのお土産として使うばかりで、自分でその味をじっくりと味わったことがなかったのです。
この記事では、そんな「はじめて自分で飲んだ高梁紅茶の感想」と、そこから生まれた暮らしの変化を綴っていきたいと思います。
お土産に選んでいた高梁紅茶——その理由と想い
高梁紅茶は、岡山県高梁市の山間地で作られる、やさしい味わいの和紅茶です。パッケージも美しく、ほのかな甘みがあり、渋みが少ないため、年齢問わず誰にでも喜ばれます。
私はこれまで、県外から来てくれた友人や、地元で出会った人への贈り物として高梁紅茶を選んできました。「高梁って紅茶作ってるの?」と驚かれたり、「これ、すごく飲みやすかったよ」と後から連絡をもらえたりするのがうれしかったのです。
けれど、それはあくまで“贈り物”としての高梁紅茶。自分の毎日の暮らしのなかで淹れて飲んだことは、実はほとんどありませんでした。そんな「ちょっとした距離感」が、私と高梁紅茶の関係だったのです。
生産者との出会い——自分で味わってみようと思ったきっかけ
そんな私が変わるきっかけとなったのが、紅茶農園の生産者さんとの出会いでした。あるイベントでお話を伺う機会があり、何気なく聞いた「紅茶づくりって、緑茶と何が違うんですか?」という質問に、ていねいに答えてくださったのが印象的でした。
「緑茶は、摘んだ後にすぐに蒸して酸化を止めます。でも紅茶は、あえて発酵(酸化)させることで、あの香りや味が生まれるんですよ」
私はその話に驚きました。紅茶も緑茶も「お茶」なのに、作り方ひとつでこんなにも違うものになるのかと。そして、何よりもその方が語る言葉のやさしさと、紅茶づくりへの情熱が、心に響いたのです。
「ああ、これは一度、ちゃんと飲んでみないと失礼だな」——そんな気持ちになりました。
はじめての一杯——淹れる時間も、味わう時間も
その日の午後、自宅の棚から取り出した高梁紅茶。何度も人に渡してきたおなじみのパッケージが、今度は自分の手にあることに、なんだか少しだけ不思議な気持ちがしました。
やかんでお湯を沸かし、ポットに茶葉を入れて蒸らす。3分ほど待つ間に、部屋中にふわっと香りが広がっていきました。どこか甘く、どこか懐かしい香り。それだけで、すでに癒されている自分がいました。
カップに注ぐと、やわらかな琥珀色の水色(すいしょく)。ひと口飲むと、まず驚いたのは「まろやかさ」でした。渋みが少なく、ほんのりと甘みがあり、するすると喉を通っていく。
正直、今まで飲んできた外国産の紅茶とはまったく違う印象でした。「あ、これなら毎日でも飲みたい」と、自然に思えたのです。
ほんのりとした甘みとやわらかな香りが心をゆるめてくれた
私はこれまで、忙しさの中で「味わう時間」をどこか後回しにしていました。けれど、この一杯の紅茶が、ふっと時間を止めてくれたような気がしたのです。やわらかな香りと、舌にのる甘み。そしてその奥にある、土地の空気や作り手の手間ひまを感じるような奥行き。
ちょうどその日は、久しぶりに自宅で静かな午後を過ごしていました。窓の外から聞こえる鳥の声、やわらかい光のなかで湯気が立つカップ。そのすべてが、ゆったりとした気持ちを運んできてくれたように思います。
「ただのお茶じゃない」——そんな風に思える、丁寧な味がありました。
お土産から暮らしのお茶へ——和紅茶のある時間
それ以来、私は少しずつ高梁紅茶を自分の暮らしに取り入れるようになりました。朝のコーヒーを紅茶に替える日があったり、子どもたちが寝たあとのひと息の時間に、茶葉をじっくり淹れてみたり。
紅茶は、ただ喉を潤すだけでなく、「自分の気持ちを整える時間」をつくってくれるように思います。どこかに遠出しなくても、特別なものがなくても、カップ一杯が豊かな時間になる。そんなことを、高梁紅茶が教えてくれました。
高梁紅茶ってどんな紅茶?——特徴と魅力
ここで少しだけ、私が飲んだ「高梁紅茶」についてご紹介します。岡山県高梁市で育てられた茶葉を使い、発酵・乾燥・選別を手作業で行う小規模生産の紅茶です。渋みが少なく、自然な甘みとすっきりとした後味が特徴で、ストレートでも飲みやすいのが魅力。
外国産の紅茶と比べると香りは控えめですが、その分、食事にもお菓子にも合わせやすく、日常の中に自然になじみます。プレゼントやお土産にもぴったりですが、何より「毎日の暮らしの中で味わってほしい紅茶」です。
おわりに|贈るだけじゃない、自分にも贈りたい紅茶
これまで「贈る側」として使っていた高梁紅茶を、あらためて自分の手で淹れ、自分の口で味わってみる。たったそれだけのことなのに、思っていた以上に大きな気づきと豊かさがありました。
忙しい日々の中、自分のためにお茶を淹れる時間はとても貴重です。そして、その時間を支えてくれるのが、和紅茶のやさしさや丁寧な手仕事のあたたかさなのだと思います。
もしあなたがまだ、高梁紅茶を自分で飲んだことがないなら——それはとてももったいないことかもしれません。贈るだけじゃなく、自分にも贈りたい紅茶。そう思える一杯に、私は出会えました。
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